2020.10.03の夜、「八重山からの風3〜”石垣島の今”から民主主義を考える」を開催しました。

この日のゲストは、石垣市住民投票を求める会 代表の金城龍太郎さん:石垣島の真ん中あたりに暮らす若きマンゴー農家さんです。

 

石垣市住民投票を求める会が、なぜ住民投票を求めているのかというと、以下の3点によるとのことです。

1)周辺地域の4公民館が反対決議を出している。

2)明確な民意が出ていない(2018年春に行われた市長選、同じく9月に行われた市議選の得票結果を見ても、自衛隊配備に賛成派の議員が得票した票、反対派の議員が得票とも拮抗しており、選挙結果で民意が反映されているとは言えず)

3)考えるきっかけに。(自衛隊基地は本当に必要なのかな?どうしても必要なら、どの地域に作るのがいいだろう?など)

 

特に住民投票を求めるにあたってネックになったのは、「地方自治法」という、国が地方自治体に対して取り決めをしている法律と、「石垣市自治基本条例」という、石垣市の最高規範とも呼ばれる石垣市独自で制定している条例で、住民投票に対して取り決めている内容が違うというお粗末な不具合がある中で、どちらを採用するのかという点で、石垣市と 住民投票を求める会の主張が食い違っているということがあります。

 

そこで、裁判所にどちらの法律を採用するのが正しいか判断を求めるため裁判を起こしました。

提訴から1年を経て那覇地裁が出した判断は、「訴訟要件に該当しないので判断せず」という、門前払いのような判断でした。

現在、控訴中です。

 

石垣島の陸上自衛隊基地建設問題の経緯

石垣島に陸上自衛隊の配備計画があることが表面化したのが2015年11月。

石垣市住民投票を求める会が発足したのが2018年9月。

この三年間の間に、最初いきなり新聞報道でこの計画のことを知ったあと、住民への説明会などの経過を見ても、不誠実だったり、プロセスもおかしいと感じるようになったものの、情報も乏しいなか、意見表明をする機会も材料も少なく感じていたところ、2018年3月に行われた石垣市長選に、はじめて選挙活動に参加する中で、徐々に若い世代も参加しやすい意識に変わっていったとのことです。

また同時期に、沖縄の米軍基地の辺野古移転問題の賛否を問う県民投票の、30名の請求代表者の一人にもなることで、徐々に自覚が生まれていったとのこと。

2018年11月の1ヶ月間の署名収集活動の中で苦労したのは、署名の認知を広めるのに時間がかかったこと。
感謝していることは、自分たち若い世代を前に出して、後ろで応援し続けてくれた、上の世代に対して感謝があるとのことでした。

活動の中では、自分たちも楽しくやること、自分たちの心が動くやりかたでおもしろくやることを心がけたということです。
音楽を使ったり、動画を作ったり、ラジオ番組の中にコーナーを設けてもらったり、新聞の一面広告を使ったり、署名を集めるために一夜限りのバーをやったりと、一ヶ月の署名期間は、市民大署名運動会と称して盛り上げて行ったとのこと。

そうしてわずか一ヶ月の間に集まった署名の数は、石垣市全有権者の1/3を超える、14263筆でした。
一人の人が2度署名することがないよう、だぶりが何度も確認され、住所の確認がとれ、

裁判については、「これだけの市民の声を、どうして市民の代表が否決するのかわからなかった。」そうです。

 

龍太郎さんのお話を伺っていて、「認める」ということがキーワードなんだな、と感じました。

思想とか信条までひとつにする必要はなく、違う意見を認めた上で、それぞれの意見を言い合ったり、お互いを尊重し合うことを大切にしていて、なかなか本当にはむずかしい「認める」ということを実践することで、多様性を認め合えるような世界で生きたい。

意見が違うとき、「同じ意見に合わせるべきだ」というのでは、対立が起きてしまう。

「目の前にいる人がまったく違う意見を持っているんだということを前提に、コミュニケーションとれる世の中でありたいと願っている」との彼の言葉に、あたたかく確かな希望を感じました。

 

若い世代がこうして中心になって、地域の起こった問題のために動いている事例というのは、そんなにたくさんはないと思います。

秘訣を龍太郎さんに伺ったところ、「若者が動かざるをえないような状況があるからこそ、動く。」ことだと思う、と。
上の世代ががんばっていて、出る幕がなかったり、声を出しずらかったりすることが、若者が発言しにくい雰囲気があるのでは?とのことでした。
若い自分たちを信じてくれる、上の世代がいらっしゃることへの感謝を話してくださり、石垣島という地域の、多世代が家族のような信頼の絆があることが感じられ、石垣島がまた大好きになりました。

 

民意を反映する別の方法として、市長のリコールなどもあるのではないか?という、参加者の方からの質問でも寄せられたのですが、石垣市住民投票を求める会としては、これからも、集められた14,263筆という圧倒的な市民の声を大切に、これからも住民投票の実施を石垣市に求めていくという姿勢を崩さず、活動を続けられるとのことでした。

 

これは「石垣で今起こっていること」ですが、自衛隊基地をどこに作るか、日本の防衛をどう考えるか、という問題は、日本全体の問題です。
地理的な理由で、シワ寄せが行かざるをえない部分があるとはいえ、これ以上の負担を沖縄に強いるのか。これは、日本全体の問題です。
「遠い石垣島で起こっている問題」ではなく、私の、あなたの、そして日本国民一人一人の問題です。

まして、仮に 自衛隊基地を石垣島に作ることがどうしても必要だったとして、それは国が場所を勝手に決めていいはずはなく、近隣住民に納得が得られるまで十分に説明がなされ、考えうるリスクが明示され、場所の代替案が他にはないのか、十分に検討し議論が公開され、近隣住民に十分な説明と対話がなされることが、国民主権の民主主義国家として当然のプロセスであろうと考えます。
自分たちの意見も聞いてほしい、十分説明してほしい、話し合ってみんなで決めたいという主張は、民主主義国家の国民として当然の欲求と権利で、それをぶれずに しかもユーモアを持って続ける、石垣市住民投票を求める会の活動は、日本が真の民主主義国であるための大切な行動だとあらためて思いました。

これからも、石垣市住民投票を求める会の活動に、心からの応援を贈るとともに、私たちが自分ごととしてできることを考えてゆきたいと思います。

 

きら/河合 史惠(一般社団法人カンパニア 共同代表理事)

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当日の様子は、下記Youtubeチャンネルで公開しております。
どうぞご覧ください。
https://youtu.be/CAR3T3Oa1wQ

 


ゲスト:金城龍太郎さん(石垣市住民投票を求める会・代表/石垣島 陸上自衛隊基地建設地近くの若きマンゴー農家さん)

総合司会・進行:赤塚 丈彦(カンパニア 理事)

石垣で起こっていることの概要説明:きら/河合 史惠(カンパニア 共同代表理事)

インタビュアー:木越 省吾(カンパニア石垣プロジェクトチーム協力メンバー)

テクニカル・サポート:サウル/桑原 康平(カンパニア 共同代表理事)

タイムキーパー:俵山 美絵(カンパニア石垣プロジェクトチーム協力メンバー/石垣市在住)

ハートキーパー:吉田 俊郎(カンパニア 理事)

石垣島現地コーディネイト:俵山 美絵・花谷 まゆ(カンパニア石垣プロジェクトチーム協力メンバー/石垣市在住)