5月中に3回に分けて実施した、「生産物と都市生活者を結び循環を作る」対話会が終わりました。

全3回の参加者は、九州から東北まで、
異なる地域の生産者さん、無農薬や自然栽培の野菜を農家から直接仕入れて販売する八百屋さん、
オーガニックカフェ経営者、そして家庭で安全な野菜を食べたい生活者など。
様々なカテゴリーの方の間で対話が生まれました。

売り方についての話題で、南阿蘇から参加した生産者は
「阿蘇には、手間暇かけた無農薬栽培をしている農家も多いが、同じ時期に同じ作物が採れるので、余ってしまうことが問題。
販路も多くはないが、価格だけではなく、顔の見える人や価値を分かってくれる人たちに食べてもらいたい。
顔の見える関係であれば、単に売るだけではなく、何か心が通うようなサービスをすることも可能かもしれない。
例えば、近くに子ども食堂があれば、余剰分の野菜を送ったりなど」と話します。
せっかく大切に作った野菜や米なのだから、その価値を分かっておいしく食べてくれる人たちに届いてほしいもの。
お互いに顔見知りの関係が作れれば、単に売る・買うということを超えて、双方向の繋がりの中でいろいろなことが可能になりそうです。

Facebookを通して販売しているという人は
「確かに安心感はあるが、意外と反応が返ってこない。感想などが返ってくれば張り合いが出るので、そんなサービスがあるといい」と言います。
生産者は、ただ作って売るだけではなく、消費者から何らかの反応があり、お互いにやり取りができる関係性を求めている。
「顔の見えない相手に売るには、きれいなものを売らなくてはというプレッシャーがすごくある」という声も。
「きれいな商品と、形の悪いものとを選別する作業は手間がかかりたいへん。そして、選別されて残ったものは、自家用として食べるにはけっこうな量だし、廃棄してしまうのはもったいないので、事情を知った上で買ってくれる人がいるといい」と言います。
私たちが何気なく食べている農産物は、実はそうした手間のかかるたいへんな作業を経たものだということに、普段スーパーで買っているだけではなかなか気づきません。
消費者側でも、形が悪くてもいいからもっと安く買いたいという人も多いはず。
そのお互いのニーズをうまくつなぐ仕組みが必要となりそうです。

情報発信や販売方法についてはどうでしょうか。
「対面販売が苦手で、奥さんのほうがうまいので任せている」
「生産しているとどんどんマニアックになってしまい、一般の消費者に伝えるのが逆に難しくなる」といった声があり、
作り手と買い手を結ぶサイトなどで、作物の品種や育て方、料理方法などについて、生産者のかわりに発信してくれるキュレーターやライターがいれば、という話が出ました。
作り手側は総じて、育てているものについてわかりやすく説明することに対して、あまり自信がないようですが、その土地の気候風土とか、それにどう対処しているかなど、消費者に伝えたいことはたくさんある。
それをうまく引き出してくれる媒介者がいれば、と。

消費者側の思いはどうでしょうか。
「話を聞いていて、作っている野菜の美味しさが伝わってきた。自分で野菜を作れないので、スーパーで安い野菜を探して買っているが、この場に来てみて、作り手の方と直接やりとりする中で、この人からこれを買いたいというのを決めたいと思った。
土の話など、農家さんが語りたいことを語ってほしいし、買い手である自分が話したいことも聞いてほしい」と話す方がいました。
作り手と同じく、買い手にも伝えたい思いがある。
「会っていない間も思い合える関係」という素敵な言葉まで出ました。
そのままでは伝え合うことは難しくても、何らかのメディアを通して、気持ちや言葉をやりとりし、心の通い合うあたたかな取引関係を作っていくことができそうです。
こうした話の流れを受けて「月一などで、こうした対話の場をオンラインで続けていくのもいいかも」という意見も出ました。

3回目の対話会では、生産物を実際にどう循環させるか、という話題が中心になりました。
「みんなで一括で買って地域で分けることもできたら送料がかからない」
「飛脚のように、どこかへ車で行くついでに届けるしくみがあれば」などのアイデア、
また「生産者と消費者を繋ぐ人同士のネットワークにより情報交換もできたらいい」という声や、
「作物や加工物に関する情報をみんなが書き込み、蓄積していけるようなプラットフォームあれば裾野が広がる」「どこにコンタクトすればなにを手に入れられるかという情報得られるようなサイトなどあれば」といった、情報を取りまとめる総合的なサイト構築に関してのアイデアが多数出ました。
「普段生活していても、食べているものについての情報量が少ないので、何を食べているか分からないし、健康に良いものがどこにあるかわからない。同じ見た目でもミネラルなどの度合いが数十倍は違ったりする。
地元の農家の方々は高齢でもすごく元気で若々しい。食べ物は重要なんだなと感じている。
うまくしくみに乗せて、地元の農家さんと、健康にセンシティブな方々とをつなぎ、その野菜を送り届けたい」と話す方も。

生産者の立場の方からは「いろんなネットワークを紹介してもらえると生産者は楽。
地域での持続可能なしくみづくりと、地域以外のところとつながる循環型のしくみが同時に両方必要。
それぞれのネットワークは信頼があれば繋がりやすい。
信頼できるというすごい財産の上に成り立っている」と話します。
消費者の立場の方からも、自分でも畑をやってみたい、オンラインなどでもノウハウを教えてもらえる場所があれば、という声が出ました。
都市でもみんなが作り手になれば、地方から送る量が減るし、安全なものも増やせます。

全3回のオンライン対話会、実り多く豊かな時間となりました。

 

(画像は、対話会にも参加してくださった、熊本県南阿蘇/Jiro Farm&Masamis Kitchen 山口じろうさんの畑でとれた元気な野菜です。)
https://www.facebook.com/JiroFarmMasamisKitchen/

きら河合史恵@生産者と都市生活者を結ぶ循環を作る対話会ファシリテーター